ふたつのハート
ーーー
私は駅に背を向けると、急いで引き返した。
しだいに風も強くなり、横殴りの雨に変わってきた。
早く行かなくちゃ!
息がきれてきたころ、ようやく川沿いにたどり着いた私は、モフモフの子と出会ったあの場所を探した。
この辺りだったかなぁ?
いない…
「お~い!」
さっきまでいたのに…
…どこ?
しずくが飛びちる草をかき分け、あちこち探したけれど、あのこはいなくなっていた。
!?…
私は立ち上がると、川面を上流から下流まで見渡した。
まさか…
だんだん不安になって来た。
そうだ! 上のほうからなら見つかるかも
橋の近くまで来ると、微かに鳴き声が聞こえてきた。
「くぅん くぅん…」
「どこ?」
上の方から小さな鳴き声が聞こえる…
いた!
「ワンちゃん!」
「アンッ!」
橋のコンクリートの台と橋桁の隙間で、モフモフのしっぽを振りながら、私を見ている白いワンちゃん。