ふたつのハート
付き合ってくれたお礼に、龍咲さんのおごりでクレープ屋さんに入った。
「わたしはチョコレートミックス」
「私はイチゴで…」
しばらく花の話をしながら、食べていた。
「花占いしたけれどダメだった、しなくても無理だけれど、あははは…」
「私なんてしたこともない…中学の頃から男子をまともに見れなかった、だから好きな人なんていなかったし…」
「じゃあ、今は?どうなの?」
「えッ!?い、いま?…と、とくにいないけど…」
「ほんとかなあ?…身近にいるあのふたりとか?」
「あのふたり!…そんな、考えたこともないよ、と言うかいつも山代くんにはからかわれているだけだし…セイ…高吉くんはそっけないし、よくわからない人だし…と言うかまともに見れないし…」
「まともに?可愛らしいしわね、あははは…確かにね、高吉くん…、雲の上の人だから…」
「雲の上…」
あ、もうこんな時間!
天神川駅で龍咲さんと別れ、帰宅路をトボトボ歩いていた。
『 ガラガラガラ… 』
ほとんどのお店は閉まり、商店街の灯りも消え始めた頃、そのシャッターの音に紛れて、若い男性の声が聞こえてきた。
「それじゃあ…」
何気なしにその声がした方向に、目をはこんでみる。
すると、そこにいたのは…
「うん…また明日ね…」
…セイカくんだった。