ふたつのハート

放課後ーー


「さよ、ごめんね、今日も例のプロジェクト会議で…」

「うんわかってるよ、頑張ってねちび、綺麗なお花期待してるから、それじゃあ帰るね、バイバイ!」

「バイバイ…」

打ち合わせばかりで、なかなかさよと帰れないよ…

でも、綺麗な花を咲かせる為、さよも言ってたけれど、がんばるぞ!


1組教室内ーー

今日もセイカくん帰っちゃった…


「いったいどうなっているの?…山代くん!あなた知らないの?高吉くんの親友でしょ?」

「そんなこと言っても、言えない訳があるんだろうから、仕方ないだろ、自分で聞いてこいよ!」

急に龍咲さんはシュンとなり、さっきの勢いが無くなってしまった。


「自分で聞けるくらいなら、とっくにやってる!…出来ないから、こうして頼んでるんじゃない…だからお願い、山代くん!…
高吉くんがいないと出来ないの…」


「はあ?…だったらさあ、他の男子でもいいじゃん…別にセイカじゃなくてもさ!…なんでセイカなんだよ!」


すると、龍咲さんは黙ってしまった。


「……」


「龍咲?…どうしたんだよ…りゅう…!?」


龍咲さんは下を向いたまま、肩を震わせ始めた。


「龍咲さん!?」


私は龍咲さんの横に行き、肩に手を添えながらもう一度呼んでみた。


「大丈夫?」

私の声に気づいた龍咲さんは、小さく頷き、ゆっくり顔を上げた。

「…ちょっとね…なんでもないから…」

なんでもない、と、言ってはいるが、その目には涙が溢れそうになっていた…

山代くんも、いつもと違う龍咲さんの姿を見て、興奮状態が薄れると、冷静になり

「俺…龍咲に、何かへんな事言ったのかなぁ…だとしたら謝るよ…龍咲、ゴメン…」

龍咲さんは小さく頷くと、持っていた花壇計画の資料を破こうとしながら、泣き叫ぶように言った。

「他の男子じゃダメなの!…せ、セイカくんじゃなきゃ…わたしが、ダメなのよーーッ!!!…ウッウ…ウワーーッ!!!…
………………

もう、辞めよう…全部…」


私はそれを見て、反射的に立ち上がると、破こうとしている龍咲さんの手を止めた。


「龍咲さん!やめて!龍咲さん!!!
お願い!やめて!」

必死に叫びながら、力一杯龍咲さんの手を抑えていると、しだいに龍咲さんの両手から力が抜け、破こうとしていた手が、ブラン、と下がった。

そして、龍咲さんは、淡々と喋り始めた。


「ご、ごめん…私が悪いんだ…


龍咲さん…
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