ふたつのハート
…高吉君じゃなければダメなの…」

山代くんも龍咲さんの側に近寄ると、龍咲さんの肩を軽くポンと叩きながら…


「もういいよ、最初からセイカ目当てだったんだろ?だいたい分かってはいたよ…
…………
中学の時、ストーカーみたいにあいつの事をさ、毎日追いかけてたもんな…おまえ…」

「ストーカー?」

山代くんの言葉に、龍咲さんは一瞬ビクッとして、また俯いてしまった。

「でも…なんで俺もなんだよ?
それに…関係ないちびちゃんまで巻きこんで…いい迷惑だよな、ほんと…」

すると、龍咲さんは顔を上げた。

メガネの向こう側に悲しそうな瞳が、涙で滲んでいるのが見える。

そして、龍咲さんは私の目を見ながら、またはなし始めた。

「それは…山代くんがいれば、必ず高吉くんがそばにいると思っていたから、それに…あの時……一緒にいた、奈々瀬さんを見たから…」

「私を?…」

「いつか電車の中で、山代くんとはなしているのを…そして、高吉くんとも…ぴったりくっついて、3人でいた…それを見て私、急に悔しくなって…」

龍咲さん…

「それで、俺達を…」

龍咲さんはまた、肩を震わせながら小さく頷いた。

私と山代くんは顔を見合わせた…

どうしていいのかわからなかった。


しばらく沈黙状態が続いだ後


「 これでプロジェクトとも解放かあ!」

…そんな…せっかく、学校に花を飾ろうって、あと少しで花壇も作れるって、楽しみにしていたのに…

すると、龍咲さんは立ち上がり、涙目をこすりながら、私達に向かって頭を下げた。

「 ごめんなさい…

私のワガママで騙したりして…でも…

花壇計画はウソではないの…

入学してからずっと考えていたから…」


うそをついたのは良くないけれど、学校中を綺麗にするのは賛成…

私は正直に言ってくれた龍咲さんに対して、特に不満はなかったから…

「龍咲さん…一緒に頑張りましょう!…あ…
山代くんも一緒にねッ!今まで通り、お願いします」


「奈々瀬さん…」


龍咲さんは私の目を見て、小さくうなずき


「ありがとう…」


「えッ!?解散じゃないの!?…あ~あ!でもさ、ちびちゃんに頼まれたら、嫌って言えないじゃん…」


「ありがとう!山代くん、大好き!…?」

あ、思わず勢いで…

だって、うれしいから…

今までなら、うれしい表現出来なかったけれど

今までの私から、何かが変わってきている…

なんとなく、そんな気がした。


「え?今、ちびちゃん…好きって?…
なぁ龍咲?…そう聞こえたろ?」


「さあ…ふふふ…」
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