ふたつのハート
ぼんやり窓の外を眺めていた…
何も考えず
何も考えられない
何も考えたくない…
『 カラン』
グラスの中で氷が溶ける音が聞こえた…
ハッ、と意識が戻った。
スマホの時計を見た、えッ!もうこんな時間?
どのくらいいたんだろう…
「奈々瀬…」
セイカ…くん…
いつの間にか、セイカくんが目の前の席に座っていたのにも気がつかなかった。
「…あ、あの…いつからここに?」
「ちょっと前から…」
「もしかしたら…見てたの?」
「ああ、ちょっと…」
あまりにも優しい笑顔で私を見つめてくれる彼に、思わず
「…えッ!…」
い、イヤ!…恥ずかしい…思わず両手で顔をかくしてしまう私…
「?…昨日のこと、オーナーから聞いたよ…明日、俺から龍咲に言う…」
「そ、そう…うん…よ、よろしくね…龍咲さんも、きっと喜ぶと思う…」
「それと…ようやく…」
ようやく?…
『タカピー!…お願いしま~す!』
タカピー?
「時間だ…行かなくちゃ…それじゃ…
…あのさ…もし、悩みとかあったら…
相談にのるから……
は~い!今行きま~す!…」
…ようやく?…なんだろ?
でも、セイカくんから相談にのるからって、言われちゃった!
まさか、山代くんのことは相談できないし…
やっぱりさよに相談しよう…
帰り際、お姉さんがドアの外まで、見送ってくた。
「レモンティー、美味しかったです!…それと、セイカくんに伝えていただいて、ありがとうございました」
「いいえ!少しは元気になったみたいね、レモンティーより、タカピー効果かな?良かったわ!…でも、高吉くんね、今月いっぱいで、ここ辞めちゃうの」
「それ!ほんとですか?」
「高吉くんのおかげで、売上過去最高になったのにぃ…とても残念だわ…」
「なんで辞めちゃうのかって、聞いてたりしますか?」
「…なんでもね、片想いの人がいるんだって、その人の為にバイトをしているとか…内緒にして下さいって言われたんだけれど、あッ!、言っちゃったあ!ナイショよ…またね~」
セイカくんに…
片想いの人…
聞かなければ良かった…