ふたつのハート
1年1組ーー
時間が早かったためか、まだひとりも来ていなかった。
「1番のり~!ヒャッホーウ!」
「いいなぁ、さよは…」
さよは、スタスタっと窓際に歩いて行き、窓から遠くに見える街並みを見つめていた。
「なにが?」
「だって、悩みとかなさそうだし、いっつも元気で明るい…私なんか、暗いし、あがり症だし…」
「また、すぐそういうことを…あたしのほうが羨ましいよ、ちびのこと」
「え?」
私もさよの隣に行き、窓の外を見ると、チラホラ生徒が登校してくるのが見える。
「ちびは自分のことわかってない…
ちょっとそのメガネ外して見て…」
さよに言われて、メガネを外した。
「ほらね、目は大きいし…ちょっと前髪…いい?」
さよは、私のおデコに手のひらを当て、前髪を上にもちあげた。
「いつもはこの前髪が長くて見えないけれど、ほらね、こうして上げると…おデコもかわいいし、もともと色白だしさ、そのまつ毛、自前でしょ?」
「う、うん…」
「長いし、いい感じでくるんてしてて、顔も小ちゃくてさ…こうして見てると、お人形みたいだもん…あたしもちびみたいになりたいよ…」
「私も、さよみたいになりたいなぁ」
「じゃあさ!ふたりで足して割ろうか?」
「うん!そうしよ!」
「よーし!…じゃあ、いっせーの、ハイっ!」
「よ~し……じゃあ、いっせ~の・はいっ!」
私とさよは、教室の別々の隅から走り出すと
中央で…
『ガバッ…ギュッ!』
私とさよはふたりガッチリと抱きしめ合った。
「フフフフ…さよ…ちび…よ~し!あとは割るだけだね!…」
「うん!」
その時、誰かが教室へ入って来たのでした。