ふたつのハート
予想もしていなかった朝の挨拶。

緊張していた体が更に硬直する。


「あ…は、はい、お、お、おは…おは…」


やだもう…


ろれつが回らない、おはよう!っていってるつもりなのに~!

ゆっくり顔をあげようと、努力したけれど、またしても動けない…


「ちび ?」


私はちょこんと頷いた。


「やっぱそうか!俺らと一緒のクラス」


同じ組?…


それを聞いた私は、ゆっくりと顔を上げていた。

彼の姿が視界に入って、黒のローファーから、次に、ストライプの紺色のネクタイ、そして顎からにっこり笑ったくちもと、そこに八重歯が見える。


思いだした!


大きな声で、彼に言いたかったけれど、言えるはずもなく…

いつも教室で大きな声で笑っている


「やましろ…?…」


少し垂れ気味の、優しそうな目。


「おう!」


彼は教室にいる時みたいに、にっこり笑っていた。

山代くんの笑顔を見たら、私の口元も緩んできて、クラスメイトだと思ったら、ちょっとだけ気が楽になった。

すると今度山代くんは、私の正面に移動して、私の顏をジロジロと見ているようで。


「…イメージが違う…」


そう言いながら、山代くんは私の濡れた前髪を指でフワッとかき分け、またまたジーッと見つめてるのだろう…


心臓がドキドキしてきた…


男子に髪を触られたことなんて今まで一度も無かったし、なによりも…


近すぎる!


突然彼は両手を使い、親指と人差し指でサークルを作ると、私の両目にピタッとくっつけてきた!



「きゃッ…」



「謎が解けた!」


や、やめて!…
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