ふたつのハート
土曜日ーー

部活の生徒が数名、朝練を終えて帰る頃、私とさよは教室へ…

「あ、龍咲さん!」

「あら、来たわね…」

紗世は教室を見渡して

「あれ?他の人は?」

「それが……」

セイカくんが来れない事を知った女子達は、全員帰ってしまったらしい…

「うそでしょー!、あたし達だけ?」

「…のようね…」

龍咲さんも、机の上でほおづえをつき、気だるそうに答えている。

「まぁ、しょうがないけれど、とりあえず3人でやりましょ…」


私たちは更衣室で体操着に着替えると、道具を借りる為、用務員室へ…

「おじさん?失礼します!」

「いよいよ始まるのかな?…準備はしておいたから…わからないことがあったら、聞いとくれ…」

「おじさん、ありがとう!」

「あたし、用務員のおじさん、初めて見た、とても優しそう」

「でしょ?結局、おじさんに全部準備してもらったのよ、あとでお礼しなくちゃネ…じゃあ運びましょう」

龍咲さんと紗世は、スコップとバケツを持って
校門脇へ先に行ってしまった。


私は何をすれば…

これなに、石ころ?

「あ、私これ押してみたい!」

残された一輪車にチャレンジ!

遠くから、紗世が、たまに振り返りながら、不安そうに私を見ていた。


「ち~び~!、大丈夫~!?ムリしないでよ~!先、行ってるから~!」

「へいき~!…こんなの…よいしょ!」

石ころが入った袋がふたつ、メッチャ重い…し…バランスが…持ち上がらない…

「うッ!うわーッ!」

倒れるぅ!…

『 ガシッ! 』

あれ?…

立ち直ってる…

一輪車、軽くなった!?

「相変わらず、ムチャするやつだなぁ…でも、けっこう…重い…」

「ひぇッ!」

後ろに人が…

しかも私の手をぎゅっと握られて、痛い…
だれ?

「痛い!」

後ろが見えないけれど、この大きな手…
見覚えが…

「セイカくん!」

「ごめん、奈々瀬…痛かった?」

「う、ううん…だいじょぶ…」

一輪車が静かに降ろされ、後ろを振り向くと
そこには、体操着姿のセイカくんがいた!


先に行ったふたりは気がつかないで、そのまま校舎の影に行ってしまった…


「なんで…」


「それがさ…昨日の夜…オーナーに言われて…」

『 「たかぴー? 」
「なんですか?」
「明日は…ヘルプかかったから出張ね!」
「なんすか?それ…」
「ここじゃない場所でお仕事」
「え?…どこですか?…チェーン店とか?」
「そうよ…場所は…」』


「業務命令だってさ…」
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