ふたつのハート
山代くんが加わり、作業も順調に進んで、いよいよレンガ積み

用務員のおじさんに教えてもらいながら、モルタルを水に溶いて準備する山代くん、跳ねた液体が顔に…

「あははは!山代の顔…おじいさんみたい!ギャハハ…うける!」

モルタルが鼻の下に付いた山代くんの顔は、ほんと、白髪のおじいさんみたいに見えて
みんな大笑い

「やましろ!違う…そこ…貸して…」

面倒見の良いさよは黙って見ていられず、タオルで山代くんの顔を拭いてあげていた…

「もう、だいじょぶだよ…待って、あ、ここも…」

こうして見てると、仲の良いカップルみたいに見えて…

「さ、サンキュー…真谷…」

ちょっと山代くん…らしくないけれど、照れているみたいだった。


その甲斐あって、レンガ積みもほぼ半分は完成

セイカくんのセンスも重なり、綺麗な花壇が徐々に出来上がっている。


「あともう少しね…この辺で、お弁当にしましよ」

「賛成ーッ!」

シートに広げて、ピクニック気分…

「いっただっきま~す!」

「外で食べるのも、たまにはいいね…」

「あれ?…そう言えば…高吉くんと山代くんは?…ないの?」

「考えてなかった…」

「同じく…出前でもとる?なッ、セイカ?」

「俺はなんでも…腹ペコだし…」


「しょうがないないわね…ツナサンドでよければ、わたしの半分どうぞ…」

「じゃあ…おにぎりで良ければ、あたしのも半分あげる!」

「さよまで!?…ん~…じゃ、じゃあ、私も…」

と言っても…

普通のお弁当だし…お箸では…
と、考えている間に山代くんが…

「あ~ッ!山代!勝手に!高吉くんにあげようと思ってたのにぃ!いやしんぼっ!」

「早い者勝ちだよ!!じゃあ遠慮なく、ツナサンドとおにぎり…ゴチになりま~す!…
…うん!メッチャうまいッ!…セイカは?もらわないの?」

「よくゆ~よなぁ…お前が食べたから、龍咲と真谷のもう半分しかないじゃん…たく!…」

「ちびちゃんの、分けてもらったら?…」


きた!?

そうだよね、みんな分けてあげたのに、私だけ独り占めなんて、ないよね…


「セイカくん?よかったらこっちにきて…」

セイカくんが私の横へ来て座ると、私のお弁当をのぞきこんでいる。

「奈々瀬のは、何?」

「あ、あの…わけてあげたいけれど…普通のお弁当だからお箸がなくては…しかも私の食べかけのなんて…嫌でしょ?」

「いや…奈々瀬が嫌でなければオレは全然…」

「私も、ぜんぜん平気だよ」

「それじゃあ…」

あッ!「ちょっと!…」

私の食べかけのお箸で…

食べちゃった…

「うん!…奈々瀬のスパイスが効いてて、メッチャ美味しい!」

私のスパイス?


セイカくんのフレーズに、みんなは目を丸くしていた。
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