ふたつのハート
「下で支えていた時に、川の水で足下をとられてバランスを崩してしまって、その時、上に乗っていた奈々瀬が落ちて来たんだ。

よろめきながら、なんとかふんばって、奈々瀬を抱き抱えた。

意識を失った奈々瀬に声をかけたけれど、まったく反応がなくて、まさか?そう思って、俺は
奈々瀬に顔を近づけて、呼吸を確認した…」



そこで初めて、俺は奈々瀬の素顔を見たんだ…

スヤスヤと眠っている奈々瀬の、無邪気な表情に吸い込まれそうになって…そのまま…

こんな気持ちになるのは、初めてで、どうしたらいいかわからなくなってしまって…

「自分の状況も危険な中、必死にちびを助ける姿…そして無邪気な寝顔の奈々瀬を見ていたら、今までの考えは消えていたんだ…そのかわり…」

今までの考えが消えて…女性に対して普通にもどったんだ…それで…

好きな人が出来たのか…

「訳があって言えなくて、時期が来たら奈々瀬に話そうって、そう思っていたんだけれど…
チビが回復したらね…」

「チビ!?…回復って!?」

「あの雨の日、奈々瀬を自宅に運んだ後、チビを動物病院へ連れて行ったんだ…栄養不足と風邪をひいたみたいで…」

「だ!大丈夫なの!?ねぇッ!セイカくん!?」

「痛ッ!…それは大丈夫だから…」こっちは痛いけど…

知らない間にセイカくんの腕を、思い切り掴んでしまっていた。

「その時、精密検査を受けたんだ…チビの母親からの遺伝で、重病が見つかって、手術をしないと危ないからって言われたんだ…
それでこの前、手術をした…」

「それで!どうだったの!?」

「成功したよ!先生も、もう大丈夫だって…」

「ほんとッ!!?…あのチビちゃん……よかった…チビちゃ~ん………」


涙が止まらなくなって、気がついたら、セイカくんの胸に顔をうずめて、大泣きしていた…

…よかった…チビちゃん…

「このことを、もし奈々瀬に知られたら、また、何をするかわからないし、心配をかけるのが嫌だったから…ゴメン…言えなくて…」

「いいよ…チビちゃんも助かったんだから…よかったね…あっ!…そういうことだったのか」

「どうしたんだよ、急に…」

「病院とバイト…」

チビちゃん…よかったね…


セイカくんに送られて家に着いた。


おかあさんが出迎えてくれて、セイカくんを見るなり、あの雨の日のことをセイカくんと長々と話していた。

あの時は、どうしても恥ずかしいから、内緒ということで、去って行ったそう。

でも、帰り際にセイカくん、なにか、おかあさんに言っていたらしい。

「ねぇ、セイカくんは、おかあさんになんて言っていたの?」

おかあさんは、笑っているだけで、教えてくれない


あの…時期が来たら…奈々瀬にこのことは必ず話します。
今はゆっくり休ませて下さい、それと、命がけで守ってくれた奈々瀬の姿を見て…俺……すみません…失礼します、…
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