しふぉん・けーき
そんな日々が続いたある日のことである。

「何回言ったらわかるわけ!?」

客のいない店の中に、立花さんと野中さん(バイト先のパートの人)の怒号が店いっぱいに広がった。

なぜ、怒号が響くのか・・・?

理由は簡単。

私はとんでもない失敗をしてしまったからだ。

それは、遡ること数分前―――

「楢井さん。ここにあるケーキをケースの中に入れておいて」

と野中さんから指示が来た。

私は言われたとおりに持ち運ぶと、ケーキの順を忘れてしまった。

「野中さん、ケーキってどう並べればいいんですか?」

「そんなことは、立花さんに聞きなさいよ」

と気だるそうな、呆れているような声が返ってきた。

まぁ、野中さんは厨房の人だから仕方がないか・・・。

私は、立花さんに同じ質問をした。

返ってきたのが―――

「いつも通り」

の一言だけ。

教えてくれてもいいのに・・・

心の中でそう思っているが、そんなこと死んでも言ってはいけない決まりだ。

だから――

「いつもどおりって言われてもわからないので、教えていただけますか?」

と私が言うと、『はぁ!?』といった表情でこちらに寄り、

「何回言ったらわかるわけ!?」

と怒号が浴びせられた。

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