しふぉん・けーき
真君がこの上ない冷酷なまなざしで雪音君たちを一瞥する。

「お茶つけを皆様の分お持ちいたしました」

と、茶碗1杯分のお茶つけを雪音君たち4人に配る。

「旦那様方、お茶つけは古来から日本人が召しあがった和食のなかでも有名なものの1つなのはご存知でしょうか?
外国の方たちも、母国へ帰られた際に食すると聞いたことがあります」

と、真君が淡々と話し出す。

「しかしながら、京都ではお茶つけにまつわる風習がございまして。
それが何かおわかりでしょうか?」

「さぁ?知らねぇな」

「では、おバカな旦那様方にお教えいたします。
京都ではお客様にお茶つけを出された場合は、『早くここから出ていけ』もしくは『早く家に帰れ』という風習がございます」

穏やかな口調と営業スマイル。

しかし、目がものすごく笑っておらず・・・

背筋に冷や汗がだらだらとにじみ出る。

「つまり、俺たちに『帰れ』と言っているのか?」

「左様でございます。
はっきり申し上げて、営業妨害でございます。
先に席を座られていたお客様に対してどかして横取りし、俺の大切な人をベタベタとその汚い手で触って、挙句の果てに俺の大切な人を口説くという所業・・・
ため口をお許しください。

・・・おめぇら、それ相応の覚悟があってのことだろうな・・・?」

と、真君は雪音君の胸ぐらをつかむ。

「前にも言ったはずだぞ」

どことなく低い声の真君は、相手を制圧しているが、どこか余裕のないように見えた。
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