しふぉん・けーき
「チっ。やっとおでましかよ。早見真。
今日こそはお前を殺してやる―――」

―――バンっ

一つの乾いた音が響いた。

真君が銃を撃ったからだ。

銃弾は野村君の腕に当たる。

野村君は痛みで喚き、その場に崩れる。

そして―――

「だまれ、野村宏。
貴様、随分なことをしてくれたようだな・・・?
覚悟はできているんだろうな・・・?」

真君は片手で私をスッポリと抱き、もう片手は銃を野村君に向けている。

「覚悟・・・?
お前をぶっ殺す覚悟ならできているけど?」

「・・・」

「けど、お前がここまでバカだとは思わなかったよ。
手ぶらでしかも銃一つでお前に何ができる?」

「手ぶら?
何を寝言を言ってるんだよ・・・?
この俺が銃一つでノコノコここまで来るわけねぇだろ?
お前の所業はこちらの上様に重い処分を下す。
もう、逃げ場はねぇよ」

と、妖艶に笑う彼の顔はまるで悪魔のようだ。

だけど、私を抱く腕は小刻みに震えている。

そりゃそうだ。

いつ銃の引き金をひくかわからない。

そんな緊張な空気がピリピリする。

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