拾い恋(もの)は、偶然か?



「あとで悔しがっても知らないから。」

「もしそうなったら全力で悔しがります。どうぞ。」



そう言って席を立って、七瀬さんを睨みつけた。睨み返してくるその目は、到底泣いていたとは思えない。結局、そういうこと。


社会人にもなって会社に迷惑をかけて、嘘で人の同情を買う。この人を形成しているのは、嘘ばかりで、部長が本当に好きなのかもどうか怪しかった。


同じ部署の先輩だ。これまでも仕事のことで話す機会はあったけど、こんな人だとは全く思わなかった。やっぱり、私が部長と付き合えたから、だろうか。今までの彼女さんたちに比べてこいつからなら楽勝で奪えるとでも思われたのかもしれない。


そこは別にいい。私がなめられているだけならね。だけど、この人のやり方はある意味、部長も馬鹿にしてる。




こんな手でもし部長が七瀬さんと付き合ったとしたら私は、部長のことを軽蔑してしまうだろうから。




「あ、古蝶!」

「待ちなさいよ。」


鳴海先輩と松崎さんが私を追いかけてくるけど、もう私は振り返ることもしたくなかった。



「あんた、結構言うね。」


そう言った松崎さんに肩を痛いくらいの力で叩かれ、一瞬立ち止まったけど。


「だって、ムカついて。」


苦笑いで再び歩き出す頃には、少しだけ気分も良くなっていた。




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