拾い恋(もの)は、偶然か?






「部長がうちの会社継がないってやつ。」

「え?」



司馬部長は、うちの会社の社長の息子だ。もちろんみんな、部長が次期社長だって思っているし、今は現場を知るための下積みとして、仕事をしているんだろうと思っていた。


もちろん、確証はない。だけど部長が部署移動する周期も普通の人とは違って早くて、それが更に信ぴょう性を深めていた。


「じゃあ誰が継ぐんすか。」

「弟でしょ、そりゃ。」

「え!」



別に長男が継ぐという決まりはないけど、部長の弟はまだ学生と聞いたことがある。どう見ても部長に落ち度があるようには見えないし、みんな長男で優秀な部長が社長になると思うのはごく自然なことだ。


「なんで?」

「知るわけないでしょ。」



思わずため口になってしまった私に呆れの視線を寄越す鳴海先輩。とりあえず苦笑いで誤魔化した。でもそうなっちゃうくらいびっくりしたということだ。そりゃ私は別に社長夫人になりたいとか思ってるわけじゃないけど、あんなに優秀な司馬部長が社長職を継がないというのは、到底信じられない。





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