拾い恋(もの)は、偶然か?
「最近、忙しかっただろう?」
「はぁ、繁忙期でもないのに部長は常にお忙しそうでしたね。」
もちろん、七瀬さんのことで嫌味も含まれているけど、あの大きな部署を束ねる部長クラスともなれば、仕事が忙しくない時期だとしてもやることは山積みだろう。
「それが一段落ついた。」
「そう、ですか。」
さすがに七瀬さんのミスネタが尽きたんだろうか?なんて考えていたら、部長が何かを差し出してきた。
「なに?映画のチケット。」
「行こう。」
「はぁ。」
それを受け取ると、次のチケット。
「舞台。」
「行こう。」
「は、あ?」
そして次。
「……クラシック、コンサート。」
「いこ」
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
上着の内ポケットから次々と出てきたそれ。部長の言葉を手で制して、部長の上着を引っ張った。
「あ、音、こんなところで。」
少女のような部長の悲鳴は無視するとして、上着をめくった瞬間、目に入った内ポケットには。
「……。」
分厚い、何かのチケットたちが詰まっていた。