拾い恋(もの)は、偶然か?
「ちょっと!見つかるわよ!」
「別に見つかっても……いいんでしょうか?」
「なんで自分で言っといて疑問形なのよ。」
松崎さんの呆れの視線に苦笑いを零した。だってなんだか、2人の距離が近く見えるというか。
「松崎さん。」
「なによ。」
私的にはそれよりも、木と同じく通りに沿って植えている植え込みにうまく身を隠している松崎さんの態勢の方が気になる。
「忍者じゃないんですから。」
「こういう時パンツはいいわね。」
ニヤリと口角を上げた松崎さんをジロジロと見ては通り過ぎる通行人。向こうから松崎さんは見えなくても、通行人でうっかり気付かれてしまいそうだ。
「見つかりますよ。」
「平気よ。」
松崎さんが自分の目を人差し指と中指で指して、その指先は通りの向こうの2人へと向かう。それよりあっちを見ろということだろうか?戦場のスナイパーじゃないんだから。
植え込みの前でしゃがむ変な態勢も手伝って、笑いをこらえるのが大変だ。
気を取り直して木の陰から2人を見てみる。遠目で表情は見えないにしても、2人ともなんだか揉めていることだけは分かった。
「あ。」
「マジ?」
すると突然、松田部長が鳴海先輩の手を自分の手で包んだ。親密そうな雰囲気に思わず、私も松崎さんも声が漏れた。