拾い恋(もの)は、偶然か?
鳴海先輩
「おはよう、古蝶。」
「……おはようございます。」
翌週の月曜日。出勤すると、当たり前だけどいつもの感じの鳴海先輩がいた。一瞬だけ私を見るとまた、パソコンに目を戻す。始業30分前には来てるのに、鳴海先輩より早かったことはない。
鳴海先輩の手は高速でキーボードを叩いている。仕事が優秀なこの人のことだ、もう今日の仕事を初めてるんだろう。
週末の光景が頭をよぎる。信じられない、まさか、鳴海先輩が?
だって先輩……
「古蝶?」
「はい?」
彼氏、いるのに。
不思議そうに首を傾げる鳴海先輩が、気が付けば目の前にいた。びっくりしすぎて固まる私に、鳴海先輩は小さく笑みを零す。
「朝からボーッとしてないで、仕事してよー。」
「……すいません。」
ちょっと色々ありすぎて仕事どころじゃありませんとは言えず、とりあえず席についてパソコンを起動する。
「古蝶君おはよう。」
「おはようございます部長。」
なんだか浮足立っているように見える部長が出勤してきても、どうやら私の頭はきちんと反応できていないらしい。
ふと気が付けば、部長が私の傍に立ってニコニコ笑っている。