拾い恋(もの)は、偶然か?



「……なにか?」

「いや、別に。」


心なしか、部長室に去っていく部長の背中がシュンとしている気がする。

「なんかさ、古蝶たちって、反対よね。」

「え?」

声に振り返れば、鳴海先輩が苦笑いで部長を見つめていた。

「部長に振り回される古蝶って感じなのに、実際は違うでしょ。」

「振り回されまくりですけど。」


週末なんかすごかった。あの後、鳴海先輩のゴシップを見たからか、興奮状態の松崎さんのテンションは最高潮だった。結局昼ごはんのあとなぜかカラオケに行かされ、行ってみたかったとかなんとかでゲームセンターにも付き合わされた。


終始ハイテンションの美女のせいで、あのうるささなのにゲームセンター中の注目を買い、ものすごく恥ずかしいことに。


疲れ切った私は結局押し切られる形で夕飯まで松崎さんと一緒に食べた。


ようやく部長の家に帰れたのは0時を過ぎたころ。週末を楽しみにしていたらしい部長の恨みがましい目は一生忘れないと思う。


思いの他子供っぽいのか、部長はきちんと不満を表してくれる。全て隠される方が嫌ではあるけど、松崎さんに振り回された後は勘弁願いたかった。



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