拾い恋(もの)は、偶然か?



生々しいな。でもそれが、人生ってものかもしれない。

「げ。」

「あ、音じゃん。」


なんてババ臭いこと言ってるから罰が当たったのか。

「なんでこんな知的な場所にいるの?」

「それ、普通に俺を落としてるよな。」

翔吾さんが急な仕事でその日の夜はフリーになった。完全に口を尖らせている翔吾さんを可愛いな、食べちゃいたいと思いながらも、買いたかった漫画とかを買いに行こうと本屋に寄った。

「なに、兄貴に振られた?」

「一人で歩いててそう思うんならあんたは松崎さんに振られたってわけね。」

「なっ。」


そこでなぜか衛に遭遇。今、いや、今年一会いたくなかった奴だ。ムッと口を尖らせた衛。翔吾さんの不貞腐れ方と違って、その口をねじ切ってやりたいと思う。


衛の唇に殺気の念を送っていると突然、肩をトン、と押された。

「っっ、」


気が付いた時には、本棚を背に衛が目の前に迫っている。

ああ、壁ドン。翔吾さんにされたら鼻血を噴いちゃう。


「ものすごく見られてるけど。」

「は?」


とりあえず、お兄ちゃんが嫌いでこういう嫌がらせをしたいんだろうけど。人気書籍コーナーで周りも開けてて人通りも多いこの場所で壁ドンなんて、愚の骨頂だ。



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