拾い恋(もの)は、偶然か?
見てよ周りの、「なにあの痛い奴ら?」的な視線。そして店員さんにいたっては、注意しようか悩んでいるような困り顔。
それにしても。
仕事が忙しい恋人にないがしろにされ、もううまくいかないかもしれない。そんな不安な夜を一人で過ごしたくなくて、主人公は人の集まる本屋へと足を向けた。そこで出会ったのは、いつも憎まれ口を叩く彼の弟。お互い悪態をつきながらも、突然の彼からの壁ドンに主人公はときめいてしまう。
「はぁ。」
なんて、少女まんがみたいな展開だったら、少しくらい動いてもいいのに。私の心臓は頑なに普通の心拍数を刻んでいる。
「なんだよ?」
「いや、残念じゃないけど、残念ながらそうじゃないのよね。」
「は?」
翔吾さんは仕事は仕事なんだけど、むしろ仕事なら仕方がないって引いた私にちょっとイラついてたくらいだし、そんな彼をないがしろにしたら世の中の女性たちに殴られそうだ。しかもこの衛がいけない。ひとっつもときめく要素がないんだけど。いやむしろ、翔吾さん以外でときめく男がいたら連れてきて欲しいんですけど。
「翔吾さん未満は全部その辺の草なのよ。ごめんなさいね。」
「何お前、やばくない?」
……ヤバいお前に言われたくない。