拾い恋(もの)は、偶然か?
「大体さ、あんた彼女いるでしょ。お兄ちゃんが気に入らないからって他の女口説いてんじゃないわよ。」
しかも、あの松崎若菜が相手だっていうのに。こんなところで私を口説いている暇があるのがかな。松崎さんのことだ。道路を挟んで向こう側の茂みからこっちを見ていたりして。見えもしないのに、思わず視線が走る。
「ああ、あれ?あの女は遊びだから。」
「はい最低。」
本当にこんな奴が好きなわけ?翔吾さんというスペシャルな人のあとで、いくらなんでも衛はない。
……それは、私の目線で見た上の話だけど。
目を細めた私を見つめ返して、衛は小さく溜息を吐いた。
「マジでなんなのお前。兄さんのことはちゃんと教えてあげただろ?」
「それでなんで私がアンタと付き合うことになるのよ。」
松崎さんという前例の前じゃ説得力ないかもしれないけど、誰もが全て、そうなるわけじゃない。いやむしろ、松崎さんが少数派。彼女は気持ちももちろん、利益もきちんと考えて恋愛をする派の人だ。ある意味、冷静に恋愛ができているのかもしれない。
「お前以外はそうなった。」
「お前言うな衛のくせに。」
「は?」
ムッとした表情の衛の言葉に、内心腹が立っていた。私以外は、ということは、これまで翔吾さんが付き合ってきた人達は全てじゃなくとも大部分が松崎さんと同じ状況になったということ。