拾い恋(もの)は、偶然か?




「クッ。」


その視線に気付いたのか、覚えてろよとばかりに衛がどっかに行く。あの様子じゃまたすぐに追いかけてくるに違いない。


「はぁ。」

周りの本を見渡してみても、なんだか心ここにあらずといった感じ。翔吾さんを取り巻く環境は、ある意味シンプル。


子供ができない翔吾さん。イコール後継者として失格、ということだろうか。


確かに、結婚を考えた上では無視はできないことだ。私だって将来、愛する人の子供を産みたいと思う。


それは女性としては当たり前の願望で、多くの人がそう望んでいるだろう。今は、子供を産まない主義の人も多いけれど。


私はやっぱり、家族は持ちたい。


だけど、翔吾さんの体のことを理由に、あの人を否定するようなことはしたくない。いや、できないのが、当たり前。


生まれつきなのか病気のせいなのか、その他の理由なのか、翔吾さんがなぜああなってしまったのかは分からないけど、それが翔吾さんの全てを否定していい理由には決してならないから。



だけど、翔吾さんの家はそれが全てかのように、彼の将来の地位も、兄としての威厳も、彼の優秀さすら否定している。



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