拾い恋(もの)は、偶然か?
司馬家の事情
とにかく一度、話をしなくちゃいけない。偶然とはいえ、衛と会うと毎度これじゃたまったものじゃないし。
私は翔吾さんだけを見て、誰にも邪魔されることなく過ごしていきたい。
……ただでさえ女子社員たちの視線がキツイ気がするのに。衛まで面倒見きれない。
「そうと決まれば。」
仕事中なことを配慮して、翔吾さんにメッセージを送る。
[今日、家に行ってもいいですか?]
「おお。」
送った途端、既読に。本当に仕事をしているのかあの人は。
[仕事が21時までかかりそうだ。それからでもいいか?]
[全然大丈夫です。]
[分かった。どこへ迎えに行く?衛は振り切っておいて。]
「……。」
無言で回りを見渡した。もちろん翔吾さんがいる気配なんてない。とりあえず鞄の中をチェックしてみてもGPSのようなものはなさそうだ。
[衛がメールしてきた。デート中だって。]
[あいつ、殴ってもいいですか?]
ほんとに抜け目のない奴。今ある状況を最大限に使っての嫌がらせは、もはや感心してしまうレベル。
とりあえずあいつは殺す。強く心に誓う。