拾い恋(もの)は、偶然か?



[それは困るな。一応弟だ。]

[私の心の平安のために必要なことなんです。]


軽口はそれくらいで。少しぶらつきたい私に合わせて翔吾さんが仕事終わりに迎えに来てくれることになった。もちろん衛を振り切るというミッションは厳命された。


とりあえず衛がいないかチェック。どうやら、ボーイズラブコーナーから出たところが見える雑誌のコーナーで張り込んでいるみたい。顔を出した時たまたま目が合わなくて助かった。



だけどそこは所詮衛。雑誌コーナーから見えないところにも道はある。近づくだけでも少々勇気のいるここを一人で張り込む事態無謀なんだ。



「バカめ。」


とりあえず悪態をついてこそこそと雑誌コーナーから見えない通路を通る。衛を警戒しつつ、小学生の参考書のコーナーを通り、絵本の棚の前で座る。絵本の棚は下の部分がくりぬいてある。そこから遠巻きに見える衛が後ろを向いたところで、一気にダッシュして本屋を出た。


「はぁ。は、あー疲れた。」


本屋から謎のダッシュで出てくる私を、今から入ろうという人たちが奇異な目で見てくる。すごく恥ずかしい。だけどそれ以上に衛が嫌なんです。




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