拾い恋(もの)は、偶然か?
「……。」
「悪い。ついてくるって聞かなくて。」
迎えに来た翔吾さんの車の後部座席に人影が。
「人聞きが悪いな。粗悪な社員を押し付けた礼をしろって言っただけだろ。」
昼間あなたの話をしていました。ついでにその粗悪な社員の話も。
「どうにかならないかな?って打診しただけだろ?」
「あれを打診というのなら、そうだな。」
呆れ顔の松田部長。懐から取り出したたばこの箱をコンコンしながら、私に目で問いかける。
「どうぞ。」
「さんきゅ。」
きちんと吸っていいか聞いてくれるよね。瞬時に火を点ける姿も様になっていて、さすが翔吾さんまではいかなくても会社の人気者なだけある。
「視線で口説くなよ聡士さん。」
「こんなちんちくりん口説くわけねえだろ。」
この口の悪さと怖さを除けば、翔吾さんと良い勝負をしたかもしれないのに。
「音、気にするなよ。音は小さいから可愛いんだ。」
「私別に小さくないですけど。」
身長は160cmちょうどくらいある。別に大きくはないけど決して小さくない数字だ。翔吾さんと松田部長。揃って180cmは超える高身長。だから私が小さく見えても不思議はない。