拾い恋(もの)は、偶然か?
「音は、最高の女性だ。」
「はっ。」
翔吾さんの色気全開の笑顔に変な声が出てしまう。見てこの素敵な人を。この人が私を好きだなんて信じられない。
翔吾さんの目はまっすぐに私をとらえていて、吸い込まれそうな黒目はだんだん近づいてくる。
「……おい。」
「へ?」
松田部長の低い声に止められなかったら、思わずキスしてしまいそうだ。
「俺がいるんだけどな。」
「すいません。」
ありがとうという意味も込めて、なんとか魅惑の顔を見ないように手で押して距離をとった。危ない。あと数センチだった。
「音、何が食べたい?」
ほっぺを私の手に押されながらも祥吾さんはめげることはないらしい。だって手はまだ私の手をきつく掴んで離さないんだから。
「なんでもいいですけど、お安めなものを。」
とりあえず私の財布に優しいものがいい。
「こいつの奢りだからなんでもいいぞ。」
「奢りはちょっと。」
翔吾さんは気が付けばなんでもお金を出してしまう人だった。外食した時もいつ会計を?というくらいの早さで会計を済ませてしまっているし。
だから、そこは私がしっかりしていないとなんでも祥吾さんの奢りになってしまう。そんな関係は対等ではないし、私は嫌いだった。