拾い恋(もの)は、偶然か?




とりあえずデートの邪魔をされたのでこれくらいの意地悪は許してほしいところだ。

「ふ。」

「マジでむかつくな。」


それに私は、ちんちくりんと言われたことを案外根に持っている!松田部長が顔を顰めたのを見て満足したから、助手席にきちんと座りなおした。


「翔吾さん、おすすめのお安いお店をお願いしまーす。」

「音、なかなか難しいことを言うね。」


苦笑いの翔吾さんがとりあえずと車を走らせる。店に着くまでの間、会話らしい会話はあまりなかった。そこで思ったのは。

意外と松田部長は、鳴海先輩に本気なのでは?ということだ。


あれくらいのことを気にするくらいには、先輩を思っていてくれるのかな、なんて。ちょっと嬉しかった。



ーーー。


「ここですか?」

「まぁ、安いよ。結構。」


店の外観を見て安そう、とは1ミリも思わない。だけど値段値段言うのもだめだと思うし、翔吾さんの正確なお安いの定義が分からない。


考えてみればこの人はいいとこのお坊ちゃんなわけで、リンゴ1個1000円とかのを安いとか平気で思ってそうだ。


「別にどちらもに合わせる必要はないと思うんだ。」


私に手を差し出した祥吾さん。握り返した私に笑みを深めた。


「俺は俺の価値観があって、音には音の価値観がある。その間をどこで取るかは、必ずしも真半分じゃない。」

「ん?」




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