拾い恋(もの)は、偶然か?
お決まりの資料室。少し暗いこの部屋で、部長に告白されている。
普通なら飛び上がって喜ぶかもしれない。こんなに素敵な男性に告白されて、抱きしめられて、背徳感たっぷりの営業時間にキスでもできれば、心臓がいくらあっても足りないだろうに、と。
だけどそれは、自分の手が届く範囲内でのこと。
普通の人生が当たり前の私のその範囲に、何かを考え込んでこんでいるこのハイスペックな男は当てはまるはずもない。
切れ長の目が私を見ては逸らされ、考え込むように天井へと向く。拗ねているように見えるその尖った唇は、キスが上手いと評判。
さすがにここまでの人だと当たり前に女性関係は丸裸。部長と付き合ったことがある人が自ら言うものだから始末が悪かった。
しかも決まって、元カノたちは可愛い子しかいない。
……そして、別れた後の退職率が極端に高かった。
「古蝶(こちょう)君。」
「はい。」
それでも私は、仕事だとしてもこの人に名前を呼んでもらえるのすら光栄で、そして最高にときめいている馬鹿者だ。
「君、俺のことが好きでしょ?」
「……へ?」
こうして自信満々に言うこの人がなぜ私の気持ちを知っているのかと、隠しもせずに目を丸くしている愚か者だった。
「だよねぇ?」
やっぱり、とばかりに頷いてみせている部長。少々ナルシストが過ぎると思う。だけど、知ってる。この人は、根拠のない確信は持たないタイプの人だ。
「なのに、何が問題かな?」
「問題、ですか?」
私の質問に、司馬部長は頷いて。ゆっくりと指先を、私の肩に這わせた。