拾い恋(もの)は、偶然か?
怯えた目を向けてくる失礼な衛は無視することにして、先を続けてとばかりに顎を上げた。私の冷ややかな視線がきちんと届いたのか、ビクッと肩がはねた衛はようやくコーヒーを口に含んだ。
「この間親父に呼び出されたんだろ?」
「よく知ってるね。」
「……そりゃ、まぁ。」
目を泳がせる衛。なんだか初めて会った時みたいなふてぶてしさはない。
この数週間で何があったのか。別に想像もしないけど。
「で?」
「お前が無視したって切れてたぞ。」
「えー、した覚えはないんだけど。」
私はあの日、高圧的な態度で命令をしてきた社長に、にっこり笑顔を返して会釈をして帰っただけ。
別に返事はしなかったけど。
いくら社長命令だとしても翔吾さんと別れるなんてありえないことだから。
翔吾さんが私に飽きて捨てられるならまだしも、なんで他人に指図されたくらいで人生最高のこの時間を自ら捨てなくちゃいけないのか。
さっぱり分からない。
「ニヤつくだけで何も言わずに出て行ったっつってた。あんな程度の低いおん、いや、失礼な女だったって。」
「今更隠しても聞こえましたが。」
程度の低い女ですって。ははは、ちんちくりんよりひどいな。