拾い恋(もの)は、偶然か?
「別れろとは言われたよ。」
コーヒーを見つめて零れた笑顔は、自分をあざ笑っているのか、それとも彼らを馬鹿にしているのか。
でも、さすがにショックじゃないわけはない。彼氏の父親に反対されてるだけじゃなく、人として蔑まれたわけだからそりゃそうだろう。
「あ、あのさ、」
「だからと言って私が実際に別れるかどうかは別の話だよね。」
「……は?」
口をパカンと開けてこちらを見ている衛に、にっこり笑ってやった。だってそうでしょ?別れろとは言われたけど、私がそうするかは私次第だし、あの場で私はそうしますともしませんとも言っていない。
「今時、32の男の親の通りに動かなくちゃいけないなんてありえないでしょ。」
それこそ、父親の言う通り私が翔吾さんに別れを切り出したとしたら、馬鹿げた話だ。
「だって、親父が言ってるんだぞ。お前の雇い主の親父が。」
「だからって私が翔吾さんと別れたら、私は翔吾さんをバカにしてると思わない?」
「なんで。」
思わずため息が漏れる。確かにさっき衛が言ってた通り、こんなところでする話じゃないなと思う。それに、決して衛と2人きりで話すことでもなく。
無償に翔吾さんに会いたいと思った。