拾い恋(もの)は、偶然か?
「俺は、兄貴が嫌いだ。」
「……私は好きだけどね。」
反論したら、衛が拳を上げる動作をした。憎たらしいとばかりに顔を顰めてみせるから、知らんぷりを決め込む。
だけど、すぐに諦めたようにため息を吐いた衛は、近くのサラダを手に取ると、ゆっくりとフォークで刺して食べだした。
「なんでも完璧。女にもモテる。体がポンコツって以外は明らかに俺より上だろ。」
「マジで、殴るよ?」
「いて!」
衛のおでこを小突いた拳がジンジンと痛んだ。子供が作れないというだけで体がポンコツなんて、言っていいことと悪いことがある。
「ほんとのことだろ!」
「私は、そういう状況にいる人をけなすような言い方をする奴は、人間じゃないと思う。」
「っっ。」
一番体のことで悲しんでいるのは他の誰でもない、翔吾さん本人だ。それを、欠陥とかポンコツとか、そういう言葉で片づけてしまうのは、あまりにも感情がなく、残念なこと。
「あんた、うちの会社の社長になるんでしょ?人情厚く経営に生かせとは言わないけどね、人の心ってものは知っておいてもいいことだと思う。」
人に優しくできない人間が、人の心が分かるはずはない。