拾い恋(もの)は、偶然か?




「経営者って人と繋がってなんぼじゃないの?」

「……お前、知った風な口聞くな。」

「別に、思ったことを言っただけだし。」


私は社長の娘でもなんでもないし、社長とは何か、を説くつもりもない。だけど、社長って私たちがしている仕事のすべてが自分に関わっていて、そこには当たり前のように相手企業様がいる。

私たちの仕事はいわばすべて会社、つまり社長そのものに関わること。そのすべてを社長が把握していないにしろ、各企業の皆様は私たちを通して社長を見ている。


「別に社長だけが偉いとは言わないけどさ、今時世襲制が残ってるくらい、社長ってうちの会社にとって大事ってことでしょ。てことはイコール、社長はそれだけ会社の顔としての行動を心掛けなくちゃいけないんじゃないの?」


サラダを食べる手を止めて、衛は私をまっすぐに見つめて話を聞いている。こんな経理の端っこにいるような平社員の話をきちんと。


それだけでも、今の社長よりはマシなのかもしれない。少なくとも私が翔吾さんと別れろと言われた日、私と社長の視線はほとんど合っていない。


「偉そうに。」

「うっさい。」


だからと言って、衛が適任、とも言わないけど。



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