拾い恋(もの)は、偶然か?
とぼけたい私の心情を察知したのか、衛の口角が上がる。ゆっくりと、見せびらかすように右手を上げると、一本一本、ゆっくりと指を折りだした。
「やめろ。」
「名前も言おうか?お前が把握してないだけでもまだまだ。」
「クッ。」
くそう。完全に面白がってるな。あ、そうだ。
衛に見えるようにスマホを取り出した。
「なにやってんの?」
「え、メッセージを送るの。」
「兄貴に?」
「違う。」
「じゃ誰に。」
それはもちろん、恐らく衛の弱点だと思われるお方。できるだけにっこり、爽やかに笑ってやった。
私が考えていることを察したのか、衛の顔がみるみる歪んでいく。
……一体、何をしたの?松崎さん。
「待て。話せば分かる。」
「なにがぁ?」
そうしているうちにも、衛に見えるようにスマホの画面を向ける。ゆっくりと指を動かして、松崎さんとのメッセージ画面をタップ。
「わ、分かったから。」
「なにが?」
「お前を傷つけて悪かった。」
「私は別に傷ついていませんがー?」
松崎さんからの最後のメッセージ。
[最近社長に出す茶菓子ケチってる。]
という謎の暴露の下の入力バーをタップした。