拾い恋(もの)は、偶然か?


とぼけたい私の心情を察知したのか、衛の口角が上がる。ゆっくりと、見せびらかすように右手を上げると、一本一本、ゆっくりと指を折りだした。


「やめろ。」

「名前も言おうか?お前が把握してないだけでもまだまだ。」

「クッ。」


くそう。完全に面白がってるな。あ、そうだ。

衛に見えるようにスマホを取り出した。


「なにやってんの?」

「え、メッセージを送るの。」

「兄貴に?」

「違う。」

「じゃ誰に。」



それはもちろん、恐らく衛の弱点だと思われるお方。できるだけにっこり、爽やかに笑ってやった。

私が考えていることを察したのか、衛の顔がみるみる歪んでいく。


……一体、何をしたの?松崎さん。


「待て。話せば分かる。」

「なにがぁ?」


そうしているうちにも、衛に見えるようにスマホの画面を向ける。ゆっくりと指を動かして、松崎さんとのメッセージ画面をタップ。


「わ、分かったから。」

「なにが?」

「お前を傷つけて悪かった。」

「私は別に傷ついていませんがー?」


松崎さんからの最後のメッセージ。

[最近社長に出す茶菓子ケチってる。]

という謎の暴露の下の入力バーをタップした。



< 223 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop