拾い恋(もの)は、偶然か?



「まさか古蝶を口説いてるとかじゃないわよね?」


松崎さんの大きな目がギョロリと私を見る。

てめえ口説かれたのか?そう聞いてるんでしょうか。いいえ口説かれていませんよ。はい。


温かい目でそれを表したはずなのに、どうやら通じていないようで。


「口説かれてないでしょう?」

もう一度聞かれる始末。


「口説かれてたら今ここに私は座っていませんが。」


衛がそんなくだらないことをまだやってるなら、私は悠長にここに座ってない。下手したらビンタくらいしてるかもしれない。


私の機械的な声に松崎さんは目を細めて。


「そりゃそうよね。また口説いてたらうちのまもくんの可愛い顔が崩壊してるとこだったわ。」


……ん?


「でも、なんで2人っきりでここにいるのぉ?」

「え?あ、それは。」


衛の腕に絡みつく松崎さんに顔を赤くした衛、改めまもちゃんは、私を一瞬見た後翔吾さんを見て視線を落とした。


さっきから、黙ってコーヒーを飲んでいる翔吾さん。この沈黙が松崎さんの睨みより怖い。


「……ぱい、だったんだ。」

「え?」


まもちゃんのつぶやきに、松崎さんが聞き返す。対して衛を見つめる翔吾さんの目の温度は、刻一刻と下がっているような気がした。



< 226 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop