拾い恋(もの)は、偶然か?
「ふ。」
馬鹿にしたような笑みを浮かべた翔吾さんは、徐に立ち上がると、私の手を取った。
「今更兄弟ごっこでもするつもりか?行こう、音。」
「え?」
翔吾さんが強引に私の手を引いたから思わず立ち上がる。衛を見れば顔を赤くしてうつむいていた。
翔吾さんの冷ややかな反応に驚きを隠せない。確かにこれまで衛に嫌がらせをされてきたんだろうけど、翔吾さんがここまであからさまに嫌悪を表すのは珍しい。
「それとも、父さんが仕向けたのかな?」
ふと、呟いたという感じだった。寂しそうに、悔しそうに。
翔吾さんの顔は笑顔を浮かべているのに、なぜだろう、泣いているようにしか、見えなかった。
「ほんと、素直じゃないのよ。」
そんな重い雰囲気を破ったのは、松崎さんのあっけらかんとした声。アイスティーを全て飲み干した松崎さんは、小さく笑ってカラになったグラスをテーブルの上に置いた。
「心配なんでしょ?お兄ちゃんのことが。」
「そ、そんなわけ、ない。」
苦虫を噛み潰したような、そんな表情の衛を見れば、松崎さんの指摘が間違ってはいないことは一目瞭然だ。