拾い恋(もの)は、偶然か?
だけどそれを素直に受け取るかどうかは、受け手次第なんだけど。
現に、衛に背を向けたままの翔吾さんは微動だにしないし、衛はそれを認めたくないのか表情は険しいままだ。
この兄弟、ある意味似てるんだと思うけど。
それをひねくれてるで済ませれるほど、事態は軽くはない。
……でも。
「衛。」
私の呼びかけに、衛が顔を上げる。
「ありがと。翔吾さんを心配してくれて。」
「音。」
認めるかどうかは別にして、衛が翔吾さんのことで今日ここにいるのは間違いないと思う。たしなめるように翔吾さんが私の名前を呼ぶけれど、私は今、衛にお礼を言いたかったから言っただけ。
私には、兄の恨みも弟の妬みも関係ない。
私と同じく、翔吾さんを心配してくれた人がここにいる。だから私はお礼を言った。大切なこの人を心配してくれる人がいるだけで心強いから。
「別に、心配とか。」
「してなくても私は今お礼を言いたかったの。ありがとう。」
もう一度言われると今度は耳まで赤くしてプイとそっぽを向かれてしまう。そんな子供みたいなしぐさを、松崎さんが横でガン見してるのが面白い。