拾い恋(もの)は、偶然か?
うんうん。好きなんだねぇ。私にはまったく理解できないけど。
「翔吾さん、行きましょう。」
ここの勘定は衛がしてくれるよ。ご心配なく。衛が何も言ってこないのをいいことに、私たちは店を出た。
「なんで。」
外に出てすぐ、翔吾さんは何かを言いかけてそれをグッと飲み込んだ。そんなこと、もうしなくてもいいのに。
「言えばいいんじゃないですか?」
「え?」
日も暮れた繁華街を、翔吾さんと歩いてる。薄暗いこの時間でも女性たちが振り返るほどのこの人は、私だけをまっすぐに見てくれる。
自分の体のことで悩んで、それを理由に家族から疎まれて。それでも会社のために働いている、健気な人。
「衛と一緒にいて嫌だったって、はっきり言っていいんですよ。」
「音……。」
いろんなことを我慢してきた人なんだと思う。諦めて、それでも前を向いて、この人はどんどん素敵な人になっていった。
道行く女性たちよ。この素敵なイケメンは私のものです。そう言う代わりに、翔吾さんの腕に絡みついた。すると自然に翔吾さんは私のおでこにキスをする。付き合いは決して長くはないけど、これが私たちの歴史だ。