拾い恋(もの)は、偶然か?
ためらいを見せた翔吾さん。そうだよね、家族を出されたら、誰だって。
「っっ、音?」
「お入りください。」
インターフォンの開錠ボタンを押して、翔吾さんの手を引いて寝室に連れていった。
「音、どうして」
「着替えてください。」
「え?」
翔吾さんは今、上半身裸姿。タオルをかけてはいても、あの人を迎える格好じゃない。
「とりあえず着替えてください。」
それだけを言い残して、寝室を出た。広いリビング、静寂に包まれていると自分の心臓の音が耳元で聞こえているような、そんな気がした。
今最高にイラついている。でもここであの人を帰してしまうのも違う気がした。
翔吾さんが見せた躊躇い。それにショックを受けたのは事実だ。
だけどこれで私が翔吾さんを疑うのも、違うから。
翔吾さんを待たずして、部屋のチャイムが鳴る。
家主の翔吾さんを待たないで部屋に人を入れるのはどうかと思ったけど。
「お入りください。」
不気味な笑顔を携えて佇むこの人と向き合うことは、必要だと思ったから。
「ここはあなたの家?」
馬鹿にしたような笑み。その顔は社長とダブって見えた。