拾い恋(もの)は、偶然か?
「音。」
翔吾さんが慌てた様子で寝室から出てきた。そして私からその人へと視線を移し、顔を険しくさせる。
そんな翔吾さんに対して、明日香さんは……。
「とりあえず、お座りください。」
「はい。」
ため息を吐いた翔吾さんが促すと、明日香さんは小さく笑ってソファーに腰かけた。挙動も、座り方でさえ、上品な洗礼されたものを感じさせる。きっとそうなるような環境で育ってきたんだろうけど、なんでだろう、こんなに美しい人なのに。
残念だな。
とりあえず、お茶でも出さなくちゃと思って立とうとすると、翔吾さんが私の手を強く引いた。
「音、お茶はいらない。」
「だけど。」
「客じゃないんだから当たり前だろ。」
翔吾さんの態度は一貫している。明日香さんをひたすら拒否しているのはきっと、私のためでもあるんだろう。
だけど。
「入れてきます。」
「音。」
この人がそうだからと言って、こちらも礼節を欠いていい理由にはならない。
翔吾さんの抗議の視線。それを無視してキッチンへ行った。
私だって面白くない。だからいつも飲んでるポーション型のものを出してやる。