拾い恋(もの)は、偶然か?


なんかイメージで、ホテルで出るような高級品しか飲んでなさそうだし。私から言ったらどっちも同じくらい美味しいけど。


いや、今からコンビニにでも行って粉末買ってくるか。いやいや、川で汲んできた水で入れてやろうか。なんて。


「ふぅ。」


いかん。色々と思考が闇の中へ。

チラリとキッチンから2人を見れば、目も合わせず、会話もしていない様子だった。


なんとなく感じている違和感。明日香さんは脅してでも翔吾さんと私の仲を引き裂きたいはずなのに、彼女が動く様子はない。


とりあえず、1人1杯ずつ、そして茶菓子を適当に見繕ってテーブルの上に置いた。


明日香さんは小さく頭を下げて、コーヒーを一口飲んだ。


まずいとも美味しいとも分からない微妙な表情。どっちの判定なんだか。どっちにしたっていいけど。このメーカーのは翔吾さんも好きだし、まずくはないはずだから。そこが残念だけど。


「ところで。」


コーヒーカップを置いた明日香さんは、笑顔を絶やすことなく私をまっすぐに私を見つめた。


「いつ、私の元へ翔吾さんを返してくれるのかしら?」

「え、一生ありませんけど。」


そう言うと、彼女の笑顔がやや曇った気がする。



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