拾い恋(もの)は、偶然か?
いやいやいや、返す返さないとかやなくてさ、まず翔吾さんは物じゃない。とかいうお決まりのやり取りなんてしないけど。返すもなにもさっきまで帰れって言われてた人のセリフじゃないような。
呆れる私をものすごい形相で睨みつける明日香さんは、わざとらしく大きなため息を吐いて翔吾さんを見つめた。
「あなたも、厄介な人と付き合ってますね。」
「それが可愛いんで。」
翔吾さん、めちゃくちゃ照れまくりで言ってますけど、敵対心はどこへ行きましたか?
「羨ましいわ。」
「やりませんよ。」
「あら残念。」
なんか、意外と、仲良くない?むかつく。
「音。」
だけど、頬を膨らませる余裕もなく、すかさず翔吾さんが私の異変に気付く。変なとこ鈍くておっちょこちょいのくせに、私のちょっとした変化も必ず気づいてくれるのはズルい。
肩を寄せて、私の顔色を見る翔吾さんの顔の背後に、無機質な明日香さんの顔が見える。
「正直。」
「ん?」
ゆるゆるに緩んでいく翔吾さんの表情とは裏腹に、私の頭はさえていく。明日香さんの行動は確実に社長の命令を受けてのお邪魔なんだけど。
---なんだろう、そこに真剣さが、足りない。