拾い恋(もの)は、偶然か?
「突然の縁談で、私も困ってるのよ。だけど会社のためには私たち、結婚した方がいいみたいだし。」
ため息を吐いた明日香さんは、ソファーに深く腰掛けて体を預けた。
……なんか、すごくくつろいできてない?初めのイメージからすでに崩れてきてるんですが。
頬杖をついた明日香さんは私の隣に座りなおした翔吾さんをジッと見つめた。だけど、その視線は私が嫉妬する間もなく外されてしまう。それも、私へと向いているその視線の種類は。
「うーん。」
「音、どうした?」
なんだか、違うんだよなー。会社で私を敵視する翔吾さん狙いの女子社員たちと比べても、上流階級育ちの余裕があるとしても、やっぱり。
「あの、あなたって。」
「ふふ、明日香って呼んで?」
「はぁ。」
私を見るその艶のある目はまるで目の前の獲物を狙う肉食獣のようだ。身の危険を大いに感じる。
「明日香さんって。」
「音、呼ばなくていいから。」
そして、普段は営業スマイルを崩すわけのない翔吾さんの鋭い視線はまさに戦闘モード。ますます、嫌な予感はぬぐえない。
「まさか、まさかですよ?」
ここは信じたくないから自分もやたら保険をかけている気がする。