拾い恋(もの)は、偶然か?
この直野明日香は【NAONO】の常務取締役。それなりに父親からの期待は受けているようだが、どうやら俺と似たような境遇だったようだ。
「これから、どうするんです?」
試すような視線は、俺に問いかけている。
あなたは音を守れるような男なのかと。
守るつもりだ。守りたい。
だが。
「俺が音に守られているのかもしれない。」
音を見ていると、今まで自分が築いてきたものがすべてバカバカしいものだったかのように思えてくる。
「ふふ、案外情けないのね。」
楽しそうに笑う直野明日香もまた、音の魅力に気付いているんだろう。
「確かに、彼女は強いわ。じゃなきゃ仮にも彼氏の婚約者に、あんなこと言わないもの。」
「ああ、実家にって話。」
小さく頷いた直野明日香は、我慢できないとばかりに噴き出した。
「ほんとなにあれ。普通実家に誘う?」
「……ちょっと、変わってるんだ。」
音に何が見えていたのか分からない。だけど俺と直野明日香に感じたなにかのせいで、音があんな突拍子もない話をしたのは間違いなかった。
「とにかく、なんだか救われた気がするわ。」
そう言った直野明日香は、音がいるリビングへ向けて小さく頭を下げ、帰っていった。