拾い恋(もの)は、偶然か?





それからほどなくして、【NAONO】で革命が起きたという知らせを聞いた。現常務取締役が副社長と手を組んで社長を解任したと。


そして副社長だった男はそのまま、常務取締役を務めていた社長の娘が社長に就任した。


優秀な技術を持った【NAONO】。うちの会社に吸収されずともこれから、生き残っていくのかもしれない。



「音、誰と話してるんだ?」


俺と部屋でくつろぐ音は、嬉しそうに誰かとメッセージのやりとりを繰り返している。俺を前にしてそんなに楽しそうに。ちょっと嫉妬してしまう。

俺の問いかけに、音がにっこりと笑う。その笑顔に過剰に反応してしまう胸に苦笑いしか出ない。


「明日香さん。」

「は?」


音の話では、どうやらあの日以来、直野明日香と親しくしているようだった。あちらは新社長に就任したばかりの身。しかも下克上を果たしたとなると、元社長派の処理にも手間を取られるだろう。そんな中でどうやらあの女は、着実に音と距離を詰めていたらしい。


……嫌な予感がしてたんだ。忌々しい女だ。



「ちゃ、ちゃんと友人としての付き合いですよ!」



何を勘違いしたのか、音が顔を真っ赤にして釈明している。いや、顔を赤くするのはおかしいだろ、音。


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