拾い恋(もの)は、偶然か?




「別に疑ってないよ。」

「ほんとかなー?」


腑に落ちない、という表情をしている音を正面から抱きしめれば、腰の辺りに抱きしめ返す感触が。音は、すべてにおいてストレートに感情を表現してくれる。


怒っていれば怒っていますよと態度にも言葉にも出すし、それが当たり前のように好きだと言う。


俺が音を好きになったのは、こういう所だったなと、音の頭を撫でながら思った。



---ある日、給湯室へ行くと、音と誰かが俺の話をしていた。


相手の女子社員は司馬部長が好きなんて案外ミーハーだと笑っていた。だけど音はそれに対して。


『ミーハーだろうとなんだろうと、好きなものは好きなんです。金持ちとか、将来有望とかイケメンとかは当たり前です。司馬翔吾という人はそういう人なんですから。私が好きになったのは司馬翔吾さんなんです。それについてくるおまけもひっくるめて好きって言って何が悪いんですか?』



彼女の言っていることは、これまで何人もの女性が言ってきた言葉と同じだった。だけどなぜか、彼女だけは違うと感じた。

司馬翔吾を見ているのであって、その背景は関係ない、そういうんではなく、音は背景にあるものもすべて含めて、司馬翔吾という男をだと言ったんだ。




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