拾い恋(もの)は、偶然か?
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「お待たせ。」
「あ、どうも。」
次の日、10時きっかりに家のチャイムが鳴った。
外に出れば私服姿の部長が。そりゃ休みなんだから当たり前だろとツッコミたいけれど、私服だろうとスーツだろうとこの人は完璧にかっこいいなと内心デレデレしてしまう私。
あー、かっこいい。内心悶えている私の視界に突然、部長の大きな手が出現した。
「行こっか。」
「……はい。」
笑顔でそう言われた日には、完全に魂ごと持っていかれるのは仕方のないことだ。
ああ笑顔が素敵。そして大きな手。男の人の手って感じ。しかも温かい。あー、いい匂い、最高。素敵すぎる。
「音?」
「は?」
不思議な表情の部長がこちらを見ている。気が付けば私は、助手席から運転席の部長の顔を数センチの距離で見つめていた。
「はいっ?」
驚いて飛びのいて判明。すでに私は部長の愛車に乗ってしまっているらしい。
……部長に夢中で気づかなかった私、どうなの?
「フ、大丈夫か?」
「はははは、い。すみません。」
いつの間にかはめられているシートベルトを強く握って、恥ずかしさに爆発しそうだ。