拾い恋(もの)は、偶然か?




「コーヒーでも買おう。」


そう言った部長が数十メートル先にある有名カフェショップの看板を指さした。私もよく行くそこは少しお高めだけどとても美味しい。


私が頷いたのを確認すると、車はドライブスルーに入っていく。


店員の声が聞こえると、部長はメニューも見ずにコーヒーを注文した。


「音は?」

「あ、私は、」


遊びに行ったり買い物先で行くけど、メニューなしだと少し困ってしまう。この店のメニューを全て把握しているわけじゃないし。


「ごめん、ちょっと待ってね。」


部長がマイクに向かってそう言ってくれて、なんとか車内から見える範囲でマイク周りのメニューを見てみる。


ううう、この店、ドライブスルーだと定番メニューが載ってないんだよね。案の定、見えるのは季節の売れ筋ドリンクとサンドイッチやケーキの類だ。


それにしても部長。この店独自のコーヒーの名前をサラリと。いつも来てるんだろうか。私よりも手馴れている部長はスマホをいじって気にしていない様子。


ううう、どうしよう。後ろも混んできてるし。部長と同じのでいいかと思ってもなんて注文していたのか思い出せない。


焦る私の前に、スマホが出現。よく見ればこの店のメニュー表のようだった。



「これを見るといい。」

「あ、ありがとうございます。」

「うん。」


笑顔の部長が私の頭をくしゃりと撫でる。ああ、素敵すぎて鼻血が出そう。



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