拾い恋(もの)は、偶然か?
部長の機転のおかげでなんとか注文を終えた私。しかも悩んだ末にこんな甘い物を頼むとは……。しかも氷がすぐ溶けちゃうものじゃない。私も部長と同じでシンプルにコーヒーとかにすればよかった。水滴が浮かぶそれを見て苦笑いを零した。
「さて、着いたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
どうやら私は部長といると意識が飛ぶほど色々と考えてしまうらしい。気が付いたらどこかの公園の駐車場に車は停まっていた。春が終わって、まだ梅雨が来ていないこの季節。部長が運転席と助手席、両方の窓を開ければ涼しい風が吹き込んできて気持ちが良い。
目の前を家族連れが通り過ぎていく、普通の日曜日。結構大きな公園だからか遊具を持った家族連れが多いな。これから遊ぶのが楽しみなのか、子供たちが嬉しそうに走っている。それを走らないようにたしなめる親も楽し気に笑っていた。
いいなー、家族って感じで。なんだかほっこりする。
ふと、部長が気になった。
「っっ、」
家族を見るその表情は酷く辛そうで、苦しそうだ。
「部長。」
「うん?」
それなのに、私が呼ぶとそんな表情なんてなかったかのように、笑顔で。だけどそれは、あのへたくそな笑顔だ。