拾い恋(もの)は、偶然か?





なんだか寂しかった。部長がなぜあんな顔をするのか、それもすごく気になる。だけど、私は。



「これ、美味しいんですよ。」

「ふ、甘そうだよね。」


誤魔化した。そして逃げたんだ。

へたくそに笑うこの人の奥底を知ってしまったら、もう戻れない気がして。これ以上踏み込むことを躊躇った。



「反省したんだ。」

「え?」


それなのに部長は、そんな私の葛藤も知らずに、私をまっすぐに見つめる。困ったように笑って、体ごと向き合って。



「一昨日、酔った君に言われたよ。」

「私、やっぱりなにか失礼を?」



頬を引くつかせる私に、部長は首を横に振る。いやいや、絶対私やらかしてる。お酒で理性を失くした私が、この人を前にして何かしないわけがない。する自信の方がしない自信の何億倍も勝る。



「胡散臭い笑顔。私、嘘は嫌いです。」

「……。」


終わった。心の中で合掌した。私は上司に、それも大好きな人になんてことを言ったのか。



「俺としては君を駆け引きで落とすつもりだったからね、その言葉には参ったよ。」


嘘を交えた駆け引きで私はどうやら部長に捕獲される手はずだったらしい。困ったように笑って飄々とそう言ってのける部長の目が笑っていない気がして、ゴクリと生唾を飲み込んだ。




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